でろーん、6周年おめでとうございます。いつも新しい世界を見せてくれるでろーんが凄く好きです。今後も無理せず、好きな活動を続けてください!樋口楓という存在が世界を変える瞬間をいつもいつまでも楽しみにしています!!
#文芸
「樋口さん、お疲れさまでした。復帰おめでとうございます!」
ラジオの生配信が終わり、ブースから出るとスタッフのみんなが出迎えてくれた。
「ありがとうございます。お休みしてすみませんでした。」
わたしは頭を下げてそう口に出す。
「いやいや、樋口さんが戻ってくるのをみんなで待ってましたよ。久しぶりに会えてよかったです!また今日からザキャッチ、よろしくお願いしますね!」
放送作家さんがそう言うと、周りにいたみんなで笑いあった。
今日、手術やフェスを終えてようやくラジオに復帰できた。世の中はついこの間新年を迎えており、新しい年になったタイミングで復帰できるとはタイミングが良すぎるだろうか。見慣れたスタッフの顔を見ると、またここでラジオができるのだとほっとする。
「また来週よろしくお願いしますー!」
そう言いながらスタジオから外に出た瞬間、冷たい風が顔を撫でる。
「どうだった?」
顔をそらした方向から、一緒にスタジオを出たレーベルスタッフの声が聞こえる。
「最高ですね。ラジオがあってよかったです」
「やっぱりそうだよね、来る前よりも元気そうに見えるから」
答えが推測されていたせいか、はたまた、見えないスタッフの顔が笑顔になっていそうなことが少し照れくさかったのか。
「そうですか?」
それだけ返した。
「ただいまー」
そう言いながらドアを開ける。
「ニャー」
部屋に入った瞬間に2匹の猫が駆け寄ってくる。
「やることあるからちょっと待ってね~」
そう言いながらパソコンの電源を点け、コラボ配信の準備を始める。
「さて今日はっと…」
猫を膝に呼び、飛び込んできたふわふわした灰色の体を撫でながら考える。今日は見知った2人とあまり交流が無い後輩が1人。ホラー系のゲームと聞いたが大丈夫だろうか。あの後輩は元気が良い子だと良く聞くが、仲良くできるだろうか。不安な気持ちがふつふつと湧き出てくる。
「あー…」
不安なことを考え始めると時々、ライバーになった最初の頃を思い出す。
あの頃はなんだかよくわからないまま過ごしていた気がする。一緒にデビューした1期生、少しづつ増えていくライバー達。よく知らないものが自分の周りに増えていく。明日は何が起きるのだろうかという、漠然とした不安を抱えていたんだろう。
それでも自分ができることを続けていた。いろんな人と一緒に配信をしたし、大勢のスタッフさんが関わるイベントに出させてもらった。ソロの音楽ライブもさせてもらったし、グループでの音楽ライブもたくさん出させてもらった。ありがたいことに外部のイベントに呼んでいただくこと、さらにはレーベルデビューもさせていただいた。CDを出したり、レギュラーラジオやレーベルイベントも用意してもらったり、当時の自分は考えられていただろうか。
気付いたら自分の周りにはたくさんの人がいた。いつも周りに支えてもらっているんだと、感謝が溢れてくる。
「ニャー」
「そうだね、お前たちもいるね」
そっと頭を撫でる。
見てるか?私。まだ先が読めない未来は続いていくみたいだ。
よし。
「配信点けまーす」
いつの間にか揃っていた画面の向こうの3人に伝え、いつものボタンを押した